創業から破綻までの足跡を辿る経営内部資料
■巨大証券会社の全生涯が明らかになる、世界的にもまれな画期的コレクション
■バブル崩壊後の金融システム改革、資本市場改革のための不可欠のデータ
■資本市場研究の国際比較にも裨益するところ大
伊 藤 正 直(大妻女子大学学長・東京大学名誉教授)
〈世界的にみても稀なコレクション〉
わが国四大証券の一つであった山一證券株式会社は、1997 年 4 月に創業 100 周年を迎えたが、同年 11 月 24 日、臨時取締役会において自主廃業に向けて営業休止を決議、100 年の歴史を閉じた。なぜ、日本を代表する証券会社が破綻に追い込まれたのか。日本の証券会社経営にはどのような問題があったのか。金融市場と資本市場の関係はどのようなものだったのか。これらの課題に答えるためには、証券会社経営の内実の分析が不可欠である。 東京大学経済学図書館は、営業休止後の同社より、同社重要社内資料のほぼすべてを寄贈していただいた。 質・量ともに貴重な第一級資料の散逸を防ぎ、今後の資本市場・証券会社経営の改善に資したい、という同社野澤社長および取締役会の厚い好意によるもので、寄贈を受けた資料は、同社創業から破綻に至る100 年間すべてをカバーしている。巨大証券会社の全生涯が明らかになる経営内部資料がこのような形で揃うことは、世界的にもまれであり、画期的なコレクションということができる。
〈100 年間の全生涯を追跡しうる内部経営資料〉
東京大学経済学部図書館は、同社より資料の寄贈を二期にわたって受けたが、今回、公開される資料は、このうちの第一期寄贈分を整理・分類したものである。この第一期寄贈分資料からは、明治 30 年の小池国三商店開業、大正 5 年の山一合資創業、大正15 年の山一証券設立から戦時金融統制下の経営に至る戦前期、混乱から証券市場再開に至る戦後改革期、高度成長から昭和 40 年証券恐慌下の日銀特融に至る高度成長期、法人営業を全面展開するバブル期、経営危機下のバブル崩壊期、これら全時期にわたる経営意思決定と経営実態、証券行政との関わり、企業間競争と経営の国際的展開などを知ることができる。なお、1990 年代のさらに詳細な資料 については、第二期寄贈資料として、現在整理中であり、まず 2013 年1 月に第二期・第一集『経営企画室資料』 がデジタル版(DVD 版)として刊行された。今後整理が完了次第、順次公開を予定している。
〈日本経済研究、経済政策研究、経済史研究にとって不可欠の資料〉
バブル崩壊後の金融システム改革において、資本市場改革はその中核的柱とされた。アジア通貨危機後のアジア諸国においても同様である。しかしながら、これまでは、銀行の研究、狭義の金融市場の研究に比べ、資本市場の研究は著しく立ち遅れてきた。わが国資本市場の構造と特質を明らかにし、その適正な改革の方向を提示することは喫緊の課題である。本資料は、この課題達成のための不可欠のデータを提供するだけでなく、 経済政策研究、経済史研究にとっても資するところ大であると確信する。
資 料 内 容
第一集 :『山一證券資料』他、戦前期~昭和 20 年代(明治 17 年~)
明治の小池国三商店創業から戦前(含む占領期)の資料。山一證券営業報告書、株主総会、取締役会決議録、 業務報告・日誌、法令関係、各種元帳などを含む。
第二集 :『山一證券資料トップマネジメント』 昭和 22 年~平成 9 年
取締役会会議録、常務会議録、部長会議録、社長書簡、企画室通達、全国支店長会議関係を収録。
第三集 :『山一證券資料トップマネジメント』 昭和 26 年~平成 9 年
常務会議録、企画室・経営企画、業務週報、業務月報、日銀考査提出資料、大蔵検査等。
第四集:『山一證券資料 山一證券昭和 40 年不況』 昭和 31 年~平成 5 年
山一證券と昭和 40 年不況に関する資料。日銀特融、日銀提出資料、大蔵省提出原稿、衆議院予算委員会提出資料、株主総会資料などを含む。
第五集 :『山一證券資料 スタッフ部門』 大正 14 年~平成 9 年
総務部・人事部・研修部・営業企画部・調査部・事務管理部・システム企画部・経理資金部・総括部の各資料を収録する。
第六集 :『山一證券資料 現業部門』 昭和 17 年~平成 9 年
株式部・債券部・累積投資部・債券引受部・金業務部資料や商業登記の資料などライン部門の資料を収録。
第七集 :『山一證券資料 営業ライン』 大正 15 年~平成 7 年
営業ラインの資料を集め、営業本部資料、営業各部・本支店関係資料や株主総会関係の資料などを収録。
第八集 :『山一證券資料 国の機関』 昭和 18 年~平成 5 年
大蔵省届出資料、大蔵省検査資料、證券引受委員会、大蔵省通達などの資料を収録。
第九集 :『山一證券資料 ファイル等、戦後処理関係、同業他社、雑書類』明治 32 年~昭和 60 年
第一集を補完。山一合資会社資料、戦前期の経費・決算などに関するファイル。GHQ 提出資料や再建整計画書などの戦後処理関係資料。同業他社に関する資料。その他雑書類を含む。
第十集:『山一證券資料 山一関連企業等』 昭和 26 年~昭和 63 年
山一総合ファイナンス、山一エンタープライズ、山一ユニベン、山一不動産管理などの関連企業に関する資料。
第十一集:『山一證券資料 秘書室・経営企画資料』昭和 17 年~平成 6 年
社内報 『山びこ』 を創刊号から全号収録。 『山びこ』は同社の推移を知れる基本資料であるとともに、企業文化・社会史的視点からも興味深い資料。他に秘書室資料、新株式発行に関する資料を収録。
第十二集:『山一證券資料 山一證券史、写真資料、業界団体』創業から破綻まで
山一證券の 60 年史である『山一證券史』(1958 年刊行)を復刻。 60 年史の草稿や執筆・写真資料、ほか未収録の各種委員会資料などを収録。
第十三集:『山一證券資料 山一投信委託(賀屋資料)委託調査等、 各種ファンド、役員会他』 昭和 44 年~昭和 56 年
日銀の元理事で山一証券投資信託委託社長であった賀屋正雄氏(1912~1994)が蒐集した「賀屋資料」の中から、山一投信委託時代の資料をまとめて収録。投資信託業務に関する業界団体の調査や大蔵省の動き、大蔵省との折衝等に関連する資料といった重要文書も。
<オンライン版>
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■プライバシー・著作権に関わる部分に一部マスキング処理がされています。
<マイクロフィルム>
■リール単位での分売が可能です。分売価格お見積りいたします。